こんにちは。株式会社LEGAREA代表の三坂です。
SNSやネットを見ていると、定期的に目に入る言葉があります。
「SESはやめとけ」。
この言葉、僕から言わせれば半分は正しい。
でも、もう半分は誤解だと思っています。
僕は営業として、そして経営者として、これまで何百人というエンジニアと向き合ってきました。
現場で苦しんだ人、そこから大きく成長した人、途中で折れてしまった人──。
そのすべてを見てきて思うのは、SESという仕組み自体が悪いわけではないということです。
運用の仕方、関わる人の姿勢、それによってまったく別の働き方になる。
今日は、やめとけの裏側にある本当の理由と、僕がこの業界で見てきたリアルを話したいと思います。
営業から見たSESのリアル
まず、営業としての視点から話します。
SESの一番の特徴は、仕事が切れにくいということです。
常に多くのクライアントから案件情報が流れてくる。スキルと人柄が合えば、最短3日で現場が決まることもあります。
景気の波にも比較的強く、常に誰かが人を探している世界です。
また、扱う案件の幅が広いのも魅力です。Web、金融、通信、モバイル、インフラ、PMO──業界も技術も多様です。
だから、エンジニアの個性や方向性に合わせた配置設計ができる。
たとえば、寡黙だけど作業が早い人はバックエンドに、調整力のある人はPMO補佐に。
営業は、そうしたマッチングのセンスが問われる仕事です。
さらに、日々クライアントとやり取りをする中で、どんな技術が求められているか、どんなスキルが市場価値を上げるかも自然と見えてくる。
案件の動きが、そのまま業界の温度計になっている。だから、エンジニアに具体的なキャリア提案ができるという強みもあります。
ただし、この仕事の難しさは人を数字に変えてしまいやすいことです。
案件が多ければ多いほど、管理の効率化が優先され、人の顔が見えなくなる。
配属した瞬間に、連絡頻度が落ち、フォローの手が止まる営業も少なくありません。
実際、現場の本音は定例では出てこない。Slackやチャットではわからない空気の変化が、現場にはある。
それを感じ取るには、実際に会いに行くしかない。
でも、その会いに行く文化が薄い会社も多い。そこに、SESの構造的な冷たさが生まれます。
営業という仕事は、案件を決めるより、決まった後に支える方が何倍も難しい。
契約と信頼のあいだに立ち続ける仕事です。
僕の実感として、SESの営業は技術を売る仕事ではなく、信頼を預かる仕事なんだと思っています。
だから、最終的にキャリアを決めるのはスキルではなく、人間性です。
どんなに優秀でも、約束を守らない人は次の現場に紹介できない。
逆に、誠実で素直な人は、まだ経験が浅くてもチャンスを掴みやすい。
人間力がキャリアの通貨になる。それがSES営業の世界です。
エンジニアから見たSESのリアル
次に、エンジニアの視点から見たSESの実態について。
案件が区切りごとに変わるため、環境を選びながらキャリアを積めるのは良い特徴です。
テストから入り、半年後には開発、1年後にはリーダー補佐。
同じ会社にいながら、まるで転職を繰り返しているようなキャリアアップができる。
その柔軟さがSESの醍醐味です。
さらに、複数の現場を経験することで、技術の幅が自然と広がります。
Java、Python、TypeScriptといった言語の違いだけでなく、業界ごとの設計思想の違いも見えてくる。
「なぜこの技術を選んだのか」という背景を理解できるようになると、技術者としての文脈力が身につく。
それが、どんな環境でも通用する力になります。
一方で、SESには孤独もあります。
雇用主は自社なのに、日々の指示は現場から。
「自分はどこの人間なんだろう」と感じる瞬間は、誰にでもあると思います。
僕もたくさんのエンジニアの声を聞いてきましたが、その孤独を和らげるのは会社の運用しかありません。
配属して終わりではなく、そこからどれだけ関わり続けるか。
ここに会社の姿勢が出ます。
そして、もう一つ大きな課題が評価のズレです。
現場では頑張っているのに、自社には伝わらず給与が上がらない。
この不一致を放置すると、エンジニアは必ず離れます。
努力を正しく翻訳してあげる仕組み──定例、推薦、レビュー──を会社が持っているかどうか。
そこが、長く続けられるかどうかの分かれ目です。
SESは、仕組みとしては安定している。
でも、人を育てる仕組みではない。
だからこそ、会社が育てる意志を持たないと、途端に冷たい職場になるんです。
誤解されやすいSESの仕組み
SESが誤解されやすい理由のひとつに、雇用主と勤務先が違うという構造があります。
エンジニアは自社と雇用契約を結んでいるのに、働くのはクライアント企業。
つまり、報酬を支払うのは自社、指示を出すのは現場。
この二重構造が、あらゆる不信感の出発点です。
また、SESでは「商流」と呼ばれる構造があります。
A社→B社→C社→エンジニアという形で、複数の会社が間に入ることがある。
それぞれがマージンを取るため、中抜きと呼ばれることも多い。
ただし、この商流があるからこそ、個人では届かない大手直契約や一次請け案件にアクセスできる。
つまり、悪ではなく橋渡しの仕組みなんです。
問題は、橋を渡す会社が何をしているか。
フォローをせず、ただ紹介して終わる会社は本当に多い。
でも、面談後も定例やメンタルケアをしてくれる会社もある。
同じ5万円のマージンでも、意味のある5万円と通行料の5万円がある。
それを見極める力が、今の時代には求められています。
LEGAREAが考える理想のSES
僕が理想だと思うSESは、営業・エンジニア・会社が三角形でつながっている状態です。
営業は現場の声を知り、エンジニアの状態を理解し、会社はその両者を支える。
この三角形のどこかが欠けた瞬間に、SESは崩れます。
だからLEGAREAでは、配属後こそスタートだと考えています。
初週・1か月・3か月の節目ごとに面談を設け、Slackでは業務報告だけでなく、雑談や感情も拾う仕組みを入れています。
「最近どう？」という一言が、辞める・続けるを左右することがある。
その一言をかけられる文化を大事にしています。
還元率という言葉もよく聞きますが、僕は数字より還元の意味が大事だと思っています。
会社が何にお金を使っているか。その使い方が人を守る。
僕たちは、その意味を説明できる会社でありたい。
そう言える会社が、これからのSESを変えていくと思っています。
結論：やめとけ、ではなくちゃんと選ぼう
「やめとけ」と言う人の多くは、放置された人たちです。
本気で頑張って、それでも報われなかった人たち。
だから僕は、その言葉を否定しません。
そのやめとけには、優しさが含まれている。
でも、本当はやめとけじゃなくて、ちゃんと選べなんです。
SESという仕組みは冷たくない。冷たくしている会社があるだけです。
僕らLEGAREAは、SESを人が見える仕組みにしたいと思っています。
現場で孤立することなく、営業と会社がちゃんと寄り添う。
単価や契約ではなく、信頼で回るSESをつくる。
それが、僕たちの仕事です。
SESはまだ未完成な働き方です。
でも、未完成だからこそ伸びしろがある。
制度やルールではなく、人の関わり方で業界は変わる。
やめとけの先に、本当の希望があると僕は信じています。
