はじめに:その「95%」の内訳、言えますか?
「還元率90%!」「驚異の95%!」 求人広告に踊る魅力的な数字。エンジニアなら誰もが「給料が増える!」と期待するでしょう。
しかし、いざ入社してみると、手取りは思ったほど多くない。 「おかしいな」と思って給与明細や契約内容を見ても、なんだかよく分からない項目が引かれている。
なぜか? それは、会社が「還元」の定義を勝手に拡大解釈し、あらゆる費用を混ぜ込んでいるからです。
本来、原価とは「給与」や「交通費」など、直接あなたに支払われるべきものです。 しかし、一部の企業では「有給休暇」や「福利厚生費」、さらには「教育研修費」や「待機リスク費」など、クリエイティブな名前をつけて原価に算入し、見かけの還元率を吊り上げています。
この記事では、現役のSES経営者が、業界のタブーである「数字のマジック」を暴き、あなたが損をしないための「正しい原価計算」を伝授します。
第1章:原価に混ぜられる不純物
私が経営において「原価(エンジニア人件費)」として認めているのは、以下の3つだけです。
- 本人への給与
- 交通費
- 社会保険料(会社負担分)
- 社会保険料は、会社が従業員の代わりに国に納めているお金なので、実質的な給与の一部として原価に含めています。
しかし、還元率90%超えを謳う企業の中には、ここに大量の不純物を混ぜているケースが多々あります。 その手口は巧妙で、言い回しは無限に存在しますが、ここでは代表的なものを3つ挙げます。
❌ 不純物①:有給休暇の「みなし消化コスト」
「エンジニアが有給を取ると、その日は売上が立たない。でも給料は払う。だから、その『空打ちリスク』も君にかかるコスト(原価)だよね?」
こういう理屈で、まだ取ってもいない有給のコストを、毎月の原価計算に上乗せする手口です。 はっきり言います。有給休暇は労働基準法で定められた「労働者の権利」であり、そのコストは会社が販管費(利益)の中から吸収すべきものです。これを個人の還元率計算に含めるのは、リスクを従業員に転嫁しているに過ぎません。
❌ 不純物②:使途不明の「福利厚生費・交際費」
「うちは社員旅行もあるし、飲み会も豪華だ。バーベキューもやる。この費用も全社員で割って、一人当たりの『還元』として計算に入れよう」
あなたがその福利厚生を使っていようがいまいが、関係ありません。 「会社が社員のために使っているお金」という名目で、これらも原価に算入されます。 結果、「還元率は高いけど、現金(給与)は少ない」という現象が起きます。
❌ 不純物③:その他、名前を変えた「謎コスト」たち
これらはほんの一例に過ぎません。会社によっては、さらに創造性豊かな(?)名目でコストを計上してきます。
- 「教育研修費」: 見てもいない動画教材の月額利用料など。
- 「PC・機材レンタル費」: 自前のPCを使っているのに引かれるケースも。
- 「リスク積立金」: 案件待機になった時のための貯金と称して引かれるお金。
名前は何であれ、これらは全て「本来、会社が経営努力(販管費)で賄うべき経費」です。これを個人の原価に入れて還元率を高く見せるのは、数字遊びに過ぎません。
第2章:なぜ「還元率75%」が限界ラインなのか?
どんなに言葉巧みに「これは君のためのコストだ」と言いくるめられても、数字は嘘をつきません。 不純物を一切抜きにして、ガチンコの「給与+社保+交通費」だけで計算すると、どうなるか。
会社を維持するためには、最低限の「販管費」がかかります。
- オフィスの家賃、光熱費
- 採用コスト
- バックオフィス(経理・労務)の人件費
- 営業コスト
- 会社の内部留保(有給消化や待機時の給与保証のため)
これらを限界まで切り詰めても、売上の約10%〜15%は必要です。 さらに社会保険料(会社負担)が約15%。
100%(売上) - 15%(社保) - 10%(会社運営費) = 75%
どう計算しても、「現金支給ベースでの還元率」は75%前後が物理的な限界なのです。
もし「還元率80%以上」「90%」を謳っているなら、
- 有給や謎の経費などの「不純物」が計算に入っている
- 会社の利益がゼロ(=いつ倒産してもおかしくない自転車操業)
- ボーナスや退職金制度が一切ない(将来の先食い)
のどれかです。魔法はありません。
第3章:結論 ─ 面接で聞くべき質問
高い還元率自体は素晴らしいことです。LEGAREAもそこを目指しています。 しかし、それが「見せかけの数字」であっては意味がない。
転職活動をする際は、単に「〇〇%」という数字だけで判断せず、面接で必ずこう質問してください。
「その還元率の内訳を教えてください」
この質問をした瞬間、面接官が気まずそうな顔をしたり、「えーっと、それはリスクヘッジとして…」と言い訳を始めたら、その95%はハリボテです。 見せかけの数字に騙されず、自分の口座に確実に振り込まれる金額と会社の誠実さを見て、キャリアを選んでください。

