こんにちは、株式会社LEGAREA代表の三坂です。
ここ数年、エンジニアの働き方は劇的に変化してきました。高還元SES、フリーランス、副業、リモートなど、選択肢は広がり、会社に縛られずに働く時代が来たとも言われています。
ただ、実際に現場を見ていると少し違う風を感じます。フリーランスという働き方が主流になりきるどころか、フリーランスNG案件が確実に増えているのです。僕のもとにも、こうした声が頻繁に届きます。
「フリーランスで案件を探しているけど、最近面談で落ちるようになった」
「正社員限定の案件が多く、選べる案件が減っている気がする」
その背景には、表には出ない現場の本音があると思っています。
フリーランスが敬遠されはじめた理由
まず理解しておきたいのは、企業がフリーランスを避けるようになったのはスキル不足が理由ではないということです。むしろ技術力だけを見れば、フリーランスの方が即戦力というケースも多い。
それでも採用を渋るのは、「安定」と「責任」という2つのキーワードが関係しています。クライアントからすると、案件の成功には継続性と信頼が欠かせません。ところが、フリーランスは短期稼働が多く、2〜3ヶ月で契約終了というケースも珍しくない。つまり、いつまで確実に在籍してくれるかが読めないのです。
そしてもう一つ、現場の担当者が疲弊しているという現実があります。フリーランスを受け入れるには、企業側で相応の準備が必要です。PCの手配、開発環境の構築、VPN・Git・社内ネットワークの登録、セキュリティ承認、入館証の発行。これらはすべて社内の複数部署をまたいだ承認フローを経て進みます。たった一人の参画でも、情報システム部門や総務、人事、現場リーダーが何重にも手続きを重ねる。そこまで整えたのに、数ヶ月で契約終了となる。そしてまた新しい人を迎え、同じ手続きを一からやり直す。これを繰り返すうちに、現場のPMやリーダーは「もうフリーランスはやめておこう」と考えるようになります。
スキルシートを見れば一瞬でわかる働き方の履歴
面談で一番見られているのはスキルよりも経歴の安定感です。スキルシートを見れば、正社員かフリーランスかは一瞬で判断できます。
なぜかというと、正社員のスキルシートは「一つの現場に長くいた履歴」が残っていることが多いです。一方で、フリーランスのスキルシートは「短期案件を転々としている履歴」が並ぶことが多く、業界の営業マンも同様の印象を抱くと思います。
たとえば3年間で7案件という人を見ると、どんなに優秀でも継続できないタイプに見えてしまう。クライアントがいま求めているのは早く入る人ではなく、最後までいてくれる人なんだろうと近年感じています。
フリーランスNG案件が増えた3つの背景
1つ目は、短期終了による現場疲弊と受け入れ負荷です。
フリーランスが頻繁に入れ替わることで、開発体制が安定しません。人が変われば環境を再設定し、再説明し、引き継ぎもやり直し。そのたびに現場の信頼関係はリセットされ、チームの生産性が落ちていきます。
2つ目は、コンプライアンス意識の高まりです。
多重下請け構造や業務委託契約のグレーゾーンに対して、クライアントがリスクを避けるようになりました。特に金融や行政系などでは、外部委託者に機密情報を扱わせること自体が厳しく制限されています。社内監査で「個人事業主がアクセスできる体制」が指摘されるだけで、取引先全体の信用問題になることもある。
そのため、正社員もしくは法人契約者のみ入場可という条件付き案件が増えているのです。
3つ目は、エンジニア供給の過剰化。
コロナ以降、未経験SESや副業層が急増し、案件単価は横ばいに。フリーランスに支払うプレミアム報酬の必要性が下がった。つまり、企業があえてリスクを取ってまでフリーランスを採用する理由が薄れてきたというわけです。
正社員という守られた立場が再評価されている
正社員の魅力は、安定だけではありません。社会保険や有給、傷病手当といった制度的な安心があることもそうですが、それ以上に大きいのは継続的な成長機会」です。フリーランスは案件単位でしか成長しない。一方、正社員は会社単位で成長させてもらえる。
技術教育・ナレッジ共有・チーム開発といった環境は、フリーランスでは手に入りづらい部分です。僕自身、何百人ものエンジニアを見てきましたが、長期的にキャリアを積み上げている人の多くは、途中どこかの段階で正社員を経験している。
会社に守られることが悪ではなく、会社をうまく使える人こそが最終的に自由になっていくと思います。
高還元SESとフリーランスの境界線が曖昧になる時代
高還元SESという仕組みは、フリーランスと正社員の中間に位置する存在です。社会保険がありながら、報酬は個人単価に近い。この形が生まれたことで、エンジニアの選択肢は確実に広がりました。
ただし、そこにも責任という軸は残ります。稼げる仕組みの裏側には、クライアントとの信頼・報告・長期稼働といった義務がある。そのバランスを理解せずに高還元だけを求める人が増えると、また同じ構造が崩れていくと思うんです。
伸びる人・止まる人の決定的な違い
フリーランスでも正社員でも、最終的に評価される人には共通点があります。それは自分の価値を正確に理解している人です。自分がなぜその単価で呼ばれているのか。現場で何を求められているのか。
その構造を理解して働ける人は、立場に関係なく選ばれ続けます。逆に、単価が高いことを実力と勘違いする人は、どんな制度を選んでもいつか詰まる。
制度に依存せず、自分で市場価値を作れる人が最終的に生き残ると思います。
まとめ:これからの時代、選ばれる側より選ぶ側に
フリーランスという働き方はこれからも残ると思います。でも、それが選ばれる側の立場のままなら、どんどん条件が厳しくなっていくはずです。いまは、制度に寄りかかる時代から、制度を選び、使いこなす時代に変わりました。
会社員でもフリーでも構いません。大事なのは、どんな環境でも信頼を積み上げられる人であること。僕は、そんなエンジニアを増やしていきたい。そしてLEGAREAは、その選択を支援できる会社でありたいと思っています。

