SES業界で「還元率95%」という触れ込みを見ると、
「そんな数字、本当にあり得るの?」と思う人も多いはずです。
今回は経営側の視点から、SESの還元率のカラクリと、なぜ95%という数字が成立するのかを解説します。

目次
- 還元率95%が『嘘ではない』理由
- 高還元SES企業が『還元率95%』を言える仕組み
- 現実的な還元率75%までの計算根拠
- 高還元SES企業の『怖さ』はここにある
- なぜ企業は『還元率95%』と言いたいのか
- 企業選びで『還元率』より見るべき5つのポイント
- まとめ:還元率95%は嘘ではなく『説明不足』の問題
還元率95%が『嘘ではない』理由
まず前提として、「還元率」は統一された業界基準がある数字ではありません。
ここが誤解の出発点です。
還元率95%と75%、両方を掲げる企業が存在する理由はシンプルで、原価に何を含めるかの定義が違うから。
例えば、
- 給与
- 社会保険
- 交通費
だけを原価とするなら、95%という数字は成立し得ます。
一方で、
- 有給コスト
- 福利厚生
- 採用費
- 育成費
- オフィス稼働費
- 管理部門コスト
まで含めると、75%前後が現実的な上限に見えてくる。
つまり、どちらも嘘ではない。計算式が違うだけ。
問題は、ほとんどの会社がその定義を説明していないことです。
そして、 経営者側も営業側も『自分たちの計算が正しい』と信じていることがほとんどです。
高還元SES企業が『還元率95%』を言える仕組み
では、95%はどうやって成立するのか。
典型例で見てみます。
客先単価100万円。
エンジニアへの直接コストが
- 給与45万円
- 社保・交通費5万円
合計50万円だとします。
この50万円だけを原価とみなせば、話はかなり変わる。
この考え方では、還元率の計算対象に「会社側の取り分の一部」まで含めるようなロジックも作れるため、95%という数字を打ち出せる。
違法でも何でもありません。
ただ定義の切り方が特殊なだけ。
実際、多くの高還元SESはこのロジックで説明しているケースがあります。
現実的な還元率75%までの計算根拠
一方で、「95%は無理」と言う側にも根拠があります。
例えば人材1人あたり本当のコストを積み上げると、
- 給与45万円
- 社保・交通費5万円
- 有給コスト3.5万円
- 採用育成費0.5万円
- 福利厚生0.2万円
合計約61万円。
客先単価100万円ならコスト率61%。
ここからさらに
- 営業費
- オフィス費用
- 事務スタッフ人件費
を差し引くと、会社に残る利益は25〜35%程度。
ここから逆算すると、還元率75%くらいが理論上の上限という主張も十分筋が通っています。
高還元SES企業の『怖さ』はここにある
高還元には魅力もありますが、経営としてはかなり綱渡りです。
- 1人辞めると利益に直撃する
粗利が薄いので、社員一人の離職インパクトが大きい。
95%還元なら、退職1人で収益構造が崩れることもある。
2.稼働が落ちると逆転しやすい
有給、病休、育休。
売上が落ちてもコストは固定。
高還元モデルはここに弱い。
3.社保・税負担で資金繰りが苦しくなる
案件が減った月に耐えづらい。
実際、高還元を売りにして苦しくなる会社が出る理由もここ。
短期的な条件が良くても、会社が潰れたら意味がない。
なぜ企業は『還元率95%』と言いたいのか
理由はかなりシンプルです。
採用競争。
「業界最高還元」
これは強い。
営業メールでも刺さる。
求職者にも響く。
しかも、還元率が高い=給与が高い
と誤認されやすい。
企業側としてはマーケティング上かなり便利な数字なんです。
だから使われる。
ただ、数字だけ切り取ると本質は見えません。
企業選びで『還元率』より見るべき5つのポイント
1. 給与・昇給・賞与の実績
「実際いくら上がっているか」を見る。
2. 福利厚生の中身
制度ではなく取得実績を見る。
3. 直契約案件の比率
直請け比率は単価向上余地に直結する。
4. 平均在籍年数
定着率は会社品質をかなり表す。
5. 経営情報の透明性
数字を隠さない会社は強い。
還元率より、こっちの方が本質です。
まとめ:還元率95%は嘘ではなく『説明不足』の問題
改めて結論。
還元率95%は嘘ではない。
ただし、原価の定義が違うだけ。
95%も75%も、計算の前提が違えば両方成立する。
問題なのは、その前提が説明されていないこと。
そして本当に見るべきなのは、
- 還元率ではなく給与実績
- 還元率ではなく経営安定性
- 還元率ではなく長く付き合える会社かどうか
です。
「高還元だから良い会社」
とは限らない。
むしろ数字より、会社の中身を見る方が長期キャリアでは重要。
SES選びで本当に見るべきものは、還元率ではなく経営の健全性かもしれません。

