はじめに:高還元SESはいい制度だけど、受け取られ方にズレが生まれてきた
こんにちは、株式会社LEGAREA代表の三坂です。
つい先日、高還元SESに対する違和感を以下のようにツイートしました。

僕は、この業界で何年も事業運営をやってきて、現場にいるエンジニアの声を直接聞いてきた立場として、このズレに対して見過ごせないものを感じています。
高還元という言葉の響きはわかりやすくて魅力的かもしれません。
単価の〇%が自分に返ってくる、そんな仕組みはたしかに夢があるし、これによって生活が安定したり、自己投資に充てられる人が増えたのは間違いないと思います。
でも最近では、制度そのもの以上に制度の受け止め方に大きな違和感を覚えるようになりました。
高還元=自分も安定して稼げる、自由に働ける。この前提が当たり前になりすぎている。
それは本当に正しいのか――。
僕は高還元SESという仕組みを否定したいわけではありません。
ただ、その制度に寄りかかって努力せずにお金が入ってくる世界を期待する人が増えていることに、大きな危機感を持っています。
そして今その空気が、どんどん澱のように広がっていっているように感じるのです。
高還元SESが生んだメリットと、裏側に潜む違和感
高還元SESの登場は、従来のSES業界において大きな改革となりました。
僕がまだ若手営業として走り回っていた頃、多くのエンジニアは自分の単価や還元率すら知らないまま稼働していました。
同じ現場なのに、報酬は大きく違う。何に使われているかわからない中抜き。
当時のSESは、都合よく人材を仕入れるだけの業界だったと思います。
そこに高還元SESが登場したのは、まさに革命でした。
・エンジニアが搾取されている構造を可視化した
・成果に対して正当な報酬が返る仕組みをつくった
・会社と個人の力関係をフラットに近づけた
価値ある一歩が確かにそこにはありました。
ただ一方で、議論が数字だけに偏りはじめた時から、空気感が少しずつ歪んでいったようにも感じています。
還元率〇%だから良い会社
還元率が低い=搾取されている
この二元論が当たり前のように語られ、
制度の前提が人の成長よりも割の良さになっていく。
この空気が広がれば広がるほど、僕は思ってしまいます。
還元率だけを追いかける人ほど、本質から遠ざかっていくんじゃないかと。
還元率で仕事を選ぶ時代――その勘違いが生むもの
ここ数年、高還元SESという仕組みが急速に広まる中で、僕が特に懸念しているのは還元率を基準に転職先を決めることが当たり前になっているという空気です。
もちろん、お金は大事だし収入を増やすことを否定する気はありません。
ただ、還元率が高い=自分が報われているという思考だけで動くのは、かなり危ういと思うんです。
なぜなら、
還元率は制度設計であって、
その人がどれだけ価値を生み出せているかとは、まったく別のものだからです。
努力しなくても稼げる仕組みというのは、実は幻想です。
高還元がつくったのは稼ぎ方ではなく、稼ぐ土台に立つ権利でしかありません。
制度によって報酬は上がるかもしれない。
でも、価値を生み出さなくなった時、自分を守ってくれるのは制度ではなく人としての信用と仕事への姿勢なんじゃないでしょうか。
本来、年収は価値の対価――制度よりも個の力が問われる時代
僕はよくエンジニアにこう尋ねます。
「単価が上がるってどういうことですか?」
スキルが増えるから?
経験が増えるから?
対応できる幅が広がるから?
それも大事ですが、僕が見てきた中で本当に単価が上がっている人には、もっと共通した特徴があります。
・小さな報連相を丁寧にできる
・仕様変更にも柔軟に対応できる
・相手の立場で考えて行動できる
つまり、人として信頼できるかどうかで、単価という数字は裏付けられていくということです。
スキルや制度が価値になる時代は終わりました。
いま必要とされるのは、どの場所でも信用される人物であること。
僕はそれを、エンジニアの本当の市場価値だと考えています。
高還元SESは武器になる。けれど居場所にはならない
よく耳にする言葉があります。
「高還元SESにいれば安心」
…いや、それはちょっと違うと思うんです。
制度が人を成長させてくれるわけではありません。
制度はあくまで応援ツールであって、成長の代替装置にはなりません。
報酬が上がっても、成長が止まれば、数年後にはただ単価が高いだけの人になります。
僕はそういう人を嫌というほど見てきました。
大事なのは、制度が無くなっても評価される人であること。
そこに気づいた人から、次のステージに進んでいけると思っています。
まとめ:簡単に上げられる報酬より、積み重ねられる価値を
還元率を追いかけるのではなく、還元率を扱える人になる。
高く稼ぐことではなく、高く評価される人になる。
その違いこそが、今この時代のキャリアの勝負どころじゃないでしょうか。
高還元SESは否定しません。だけど、依存は危険です。
制度に乗るのではなく、制度を活かす側に回る。
それができたとき、報酬は結果としてついてきます。
僕はこれからもそんなエンジニアを増やしていきたいですし、
LEGAREAはその土台になる会社であり続けたいと思っています。

