こんにちは、代表の三坂です。
最近、高還元SESについて相談をいただく機会が増えてきました。
表面的にはシンプルに見える事業なのに、実際に運営してみると想像以上に負荷がかかる。そんな声を聞くたびに、見えないひずみを、どれだけ丁寧に扱えるかがすべてなのではないか と個人的には思っており、今回は、高還元SESの現場で僕が日々感じていることを、素直に書いてみたいと思います。
1. 粗利の薄さは、数字以上に重さを持つ
例えば還元率80パーセントで単価70万円なら、会社に残るのは十数万円ほどになります。
この十数万円の中から、社会保険料の会社負担や固定費、媒体費、バックオフィスの工数などをまかなっていく。
数字だけ見ると成り立っているように見えるのに、実際の手元資金は驚くほど軽い。
この感覚のズレが、高還元SESの難しさだと思っています。
媒体費を少し強めただけで資金が薄くなる。
退職が一件入るだけで、翌月の計算が変わってしまう。
薄利という構造の上では、ほんの小さな変化が、大きな意味を持つんじゃないかと感じています。
2. 人の動きが、そのまま数字に跳ね返る
どの業界でも退職や休職は起きますが、SESの場合はその影響がダイレクトです。
売上が人に紐づくからこそ、ひとつの離脱がそのまま粗利の減少につながる。
しかも、それは単体で起きることばかりではありません。
退職に伴う対応、現場との調整、周りのメンバーの心理的な変化。
複数の要素が同時に発生することも珍しくないと思います。
高還元は採用力という魅力を持つ反面、会社に残る粗利が薄いぶん、
こうした変動を吸収できる余白がほとんどありません。
だからこそ、日々のコミュニケーションや、メンバーのコンディションを把握することが、最終的には財務の安定に直結するんじゃないかと思っています。
3. 媒体費はいつ使うかでリスクの大きさが変わる
SES企業の成長は採用に左右されます。
だからこそ、多くの会社が媒体費を投下してチャンスを広げようとする。
ただ、媒体費はタイミングの影響を強く受けます。
応募が来ない月もあれば、想定よりも歩留まりが悪い月もある。
高還元SESでは投下資金に対して回収できる幅が狭く、
思ったように成果が出なかった月の負担はかなり大きく感じられると思います。
メンバーが辞めた直後に媒体費を強めると、数字が跳ね返って苦しくなる。
逆に、案件が急に決まった時に募集を止めてしまうと、すぐに人材が枯れる。
媒体費は金額ではなく、
許容できる変動の幅の中で使えるかどうかがポイントだと考えています。
4. シンプルさが誤解を呼び、現場にひずみを残す
SESは一見、とても分かりやすい事業に見えると思います。
人がアサインされれば売上は安定する。
還元率を高くすれば採用が進む。
見た目の仕組みはとてもシンプルで、だからこそ誤解も生まれやすい。
一定の規模に達すると、
自分にもできるんじゃないか
と考える人が出てくることもあります。
ただ、その裏側には、入金サイトによる資金の偏り、退職や案件終了のタイミング、広告費の変動、固定費、内部の温度差など、
表面では見えない複数の要素が同時に動いています。
こうした事情を知らないまま独立を考えると、
必ず想定していなかった負荷にぶつかる瞬間が来ると思います。
シンプルに見えるほど、内側の複雑さは伝わりづらく、
そこで起きた誤解が、組織にひずみを残してしまうこともあります。
5. 安定に見える数字の下で、変動は常に起き続けている
銀行口座には毎月同じような金額が振り込まれる。
数字だけ見ると安定しているように見える。
でも、その裏では小さな出来事が静かに積み重なっていて、
それが余白の少ない高還元SESにとっては大きな意味を持ちます。
退職、休職、案件終了、媒体費の不発、早期離脱、未回収リスク。
こうした出来事は単発ではなく、つながって表面化することが多いと思います。
大きな問題は、一つひとつの出来事自体ではなく、
それらが重なるタイミングが読めないことにあると感じています。
だからこそ、
・資金の持ち方
・採用と定着のバランス
・固定費のコントロール
・リスクの早期発見
こうした地味な積み重ねが、結果的に事業を支える柱になっていくんじゃないかと思っています。
おわりに
SESという事業は、外から見える姿と、中で体験する現実のあいだに大きな差があります。
その差に気づかずに走り続けてしまうと、どこかで必ず無理が出ます。
高還元は魅力的です。
採用にも強く、仲間を集めやすい。
ただその裏側には、薄利ゆえに見えないひずみが積み重なりやすい構造があります。
そのひずみを、どう丁寧に扱っていくか。
僕はそこに、SES経営の本質があるように感じています。
この記事が、どこかで迷っている方や、これから高還元モデルを考えている方にとって、少しでもヒントになれば嬉しく思います。

