こんにちは、LEGAREA代表の三坂です。
SESの世界は本当に複雑で色々とややこしいですが、それを正しく情報発信するメディアもないと言う負の連鎖が起きています。特に、ネットで検索しても出てこないような以下の3つの点について詳しく解説していきます。
「還元率って何が含まれてるの?」
「現場が創立記念日で休みのときって、欠勤扱いになるの?」
「精算幅140〜180時間で140時間超えてたら、休んでも給与引かれないんじゃないの?」
① 還元率って、何が含まれてる?
還元率75%、還元率80%
SES業界ではおなじみのフレーズですが、実際にはその中身を理解している人は少ない。
還元率とは、クライアントに請求する金額のうち、どれだけをエンジニアに戻しているかという比率。
だけど、会社によって何を含めて計算しているかがまるで違うんです。
実際の原価構造(単価80万円・還元率75%のケース)
| 項目 | 内容 | 金額(目安) | 備考 | 
|---|---|---|---|
| ① 基本給(総支給) | 給与原資(還元率75%) | 600,000円 | 還元率のベース。実際の給与計算の元。 | 
| ② 従業員負担 社会保険料 | 健康・厚生年金・雇用保険(個人負担) | 約98,000円 | 給与から天引きされる。 | 
| ③ 会社負担 社会保険料 | 会社が支払う法定福利費 | 約82,000円 | 見えにくいが会社の実コスト。 | 
| ④ 交通費 | 定期代・通勤費など | 約10,000円 | 給与とは別に支給されるケースが多い。 | 
| ⑤ 諸経費 | 現場業務にまつわる必要経費 | 約10,000円 | 発生しない人もいる。 | 
| ⑥ 総支給 | 60万円から引く | 約520,000円前後 | 実際の受取金額。 | 
還元率75%と聞いても、実際に手元に残るのは約52万円の総支給に対して43万円前後。
さらに会社も、会社負担の保険料や交通費、教育費などで約25万円を負担している。
つまり、高還元とは単純に「たくさん渡す」ではなく、「どの部分を会社が背負っているか」の話なんです。
② 現場が創立記念日で休みの際、欠勤控除されるの?
次に、SESならではのグレーゾーン、現場が休みの日の給与について。
クライアントから「今週金曜は創立記念日でお休みです」と言われたとき、
多くのエンジニアが思うのは、「その日って欠勤扱い?」という不安。
結論から言うと――
本人責任ではない休みなら、欠勤控除にはなりません。
なぜならSES契約は、
- クライアントとの間では準委任契約
 - 所属会社との間では雇用契約
 
という二重構造になっているからです。
現場が休みというのは、クライアント都合の休業。
したがって、労働者の責任ではありません。
ただし、ここで重要なのは「雇用契約の観点」です。
所属会社との関係では、あなたは社員です。
つまり、現場が休みでも「会社員として勤務日扱い」になります。
「現場が休み=何もせず休んでいい」ではなく、
「現場が休み=自社の社員として過ごす日」。
これを明文化している会社は、ほんの一握りです。
でも、ここを曖昧にしていると、結局責任の所在がぼやけてしまう。
雇用関係を守るというのは、給与を払うだけじゃなく、社員の時間の意味づけを会社が持つことでもあるんです。
③ 精算幅を満たせば、欠勤しても控除されない?
最後は、SES特有の精算幅の話。
たとえば「契約上140〜180時間で満額支給」となっている場合、
こう考える人が多いはずです。
「140時間超えてれば、途中で休んでも欠勤にならないよね?」
結論を言うと、それは誤解です。
精算幅=請求の枠、給与の基準ではない
精算幅というのは、クライアントへの請求条件です。
たとえば、140〜180時間で固定報酬なら、
140時間以上働けば会社は満額80万円を請求できます。
でも、それは会社がもらう金額であって、
あなたの給与計算の根拠ではないんです。
雇用契約と業務委託契約の決定的な違い
| 契約種別 | 給与の決まり方 | 欠勤扱いの考え方 | コメント | 
|---|---|---|---|
| 正社員(雇用契約) | 月給固定制(労働時間に連動しない) | 勤怠上の欠勤は原則控除対象 | ただし、140hを下回っても会社都合なら控除しないケースあり | 
| 業務委託(準委任) | 稼働時間連動制 | 稼働しなければ報酬なし | 精算幅に直接影響。自営業に近い。 | 
つまり、「140hを超えてるから欠勤しても大丈夫」という考え方は、
給与を業務委託的に扱っている発想なんです。
正社員であれば、月給=契約上の労働提供の対価。
だからこそ、会社はあなたの休みを欠勤扱いにするかどうかを判断しなければならない。
これは雇用関係を守る責任の部分なんです。
LEGAREAのスタンス
LEGAREAでは、
- クライアントへの請求(精算幅)と給与計算を完全に切り分け
 - 精算幅下限を下回った場合も、本人責任でない限り給与控除はしない
 - 欠勤扱いの判断は「本人都合」か「現場・会社都合」かで明確化
 
というルールにしています。
精算と雇用を混同しない。
この線引きができていないSES企業が、実はものすごく多いんです。
まとめ
今回の3つのテーマをまとめると、こうなります。
| テーマ | 表面上の見え方 | 本当の意味 | 
|---|---|---|
| 還元率 | 高ければ良い | 何を含むかが重要。数字の定義を開示できるかが信頼の指標。 | 
| 現場が休みの日 | 休みだから控除? | 控除しない。自社タスク・成長日に変換できる会社が強い。 | 
| 精算幅と欠勤 | 140h超えれば休んでOK? | 精算は請求条件。給与とは別。混同してはいけない。 | 
SESという仕組みは、
契約と雇用のあいだにたくさんのグレーゾーンを持っています。
でも、そのグレーをどう扱うかで、会社の本質が見える。
高還元とは、数字の話じゃなくて、
「社員の時間と責任を、どこまで会社が背負っているか」の話なんだと考えています。
ではまた次回!
        
        
            
    
    
                    
