こんにちは、代表の三坂です。
最近、エンジニアの皆さんや同業者の方から
高還元SESについての相談をいただく機会が増えてきました。
「還元率95%」という数字は非常にシンプルで魅力的に映ると思います。
でも、実際に経営の現場で数字を動かしている立場から見ると、
そこには外からは見えない歪みや、想像以上の重さがあると感じています。
なぜ、高い還元率を謳う企業が倒産してしまうのか。
その裏側にあるリスクと、その中でどうやって身を守るべきなのか。
僕が日々感じていることを、素直に書いてみたいと思います。
目次
- 1. 原価の定義に潜む、感覚のズレ
- 2. 社保と消費税が、数字以上の重さを持つ
- 3. 退職1件が、そのまま経営に跳ね返る
- 4. 多重下請けの縮小と、ビジネスモデルの限界
- 5. 倒産リスクを避けるために、エンジニア視点でできること
- 「数字」だけでなく「営業体制」を見る
- 組織内の危険信号をキャッチする
- 最悪の事態を想定しておく
- 自身の市場価値を測り続ける
- まとめ
1. 原価の定義に潜む、感覚のズレ
よく「還元率95%」と「75%」の違いについて聞かれますが、実は企業によって原価の計算方法は全く違います。
- 還元率95%の企業:
原価に「有給消化分 + 福利厚生 + 採用・研修費」まで含めている。 - 還元率75%の企業:
原価を「給与 + 社会保険料 + 交通費」だけで計算している。
同じ月給30万円のエンジニアでも、
会社が負担する実際の原価は35万〜40万円になるケースがほとんどです。
高還元をアピールする企業ほど、
この原価の定義を明確にしていない傾向があり、
ここに最初の落とし穴が隠されているんじゃないかと思っています。
2. 社保と消費税が、数字以上の重さを持つ
還元率が95%ということは、
会社に残る利益(粗利)はわずか5%しかありません。
この薄利という構造は、手元資金(キャッシュフロー)を激しく圧迫します。
月給30万円のメンバー1人につき、社会保険料の会社負担は毎月4〜5万円。
これが数パーセントの薄い粗利をダイレクトに直撃します。
さらに重いのが消費税の納税です。
多くの高還元企業は、消費税の納税時期に合わせて、
銀行に返すためのキャッシュが残っていません。
つまり、既存メンバーの消費税や固定費を支払うためだけに、
毎月必死になって新規案件を獲得し続けなければならない。
粗利率が低い企業ほど、小さな変化が大きな意味を持ちます。
3. 退職1件が、そのまま経営に跳ね返る
どの業界でも退職は起きますが、
高還元SESの場合、その影響はダイレクトです。
月給30万円のエンジニアが1人退職すると、
会社が頼りにしていた月15万〜20万円の粗利が一瞬で吹き飛んでしまいます。
新しいメンバーを1人採用して研修を行うには、
約50万〜80万円のコストがかかり、回収までに平均3〜4ヶ月は必要になります。
しかし、高還元企業は採用費を原価に含めて計算していないことが多いため、こうした変動を吸収できる余白がほとんどありません。
実際、離職率が月に3〜5%に上がっただけで、
その月の利益が赤字に転落する企業も実在します。
4. 多重下請けの縮小と、ビジネスモデルの限界
そもそも、なぜ95%もの高還元が成り立つのか。
それは、元請けから月単価80万円以上という高額で
直接案件を受注できているからです。
これが3次下請け以下の案件になると、
手数料が引かれて物理的に不可能になります。
ただ、今は大手SES企業が中間の商流を抜く直営化を進めており、
多重下請け企業の存在意義は薄れつつあります。
さらに、政府による偽装請負への指導が強化されれば、
現在のマージン率を維持できなくなるリスクは跳ね上がります。
高還元を謳う企業の多くは、「案件の数を確保できなくなったら、即倒産する」という、非常にデリケートな構造の上に立っていると思います。
5. 倒産リスクを避けるために、エンジニア視点でできること
会社が倒産してしまえば、
どれだけ高い還元率も意味をなさなくなってしまいます。
だからこそ、エンジニアの皆さんには、
以下のような地味な積み重ねで身を守ってほしいと思います。
「数字」だけでなく「営業体制」を見る
還元率だけで判断せず、給与の安定性や福利厚生、会社の営業体制を総合的に見極める。
組織内の危険信号をキャッチする
決算月(3月・9月など)に給与遅延や残業代カットがないか、社内の温度差にアンテナを張る。
最悪の事態を想定しておく
「もし明日倒産したら、離職票は出るか」
「最終月の給料は払われるか」を頭の片隅においておく。
自身の市場価値を測り続ける
年1回は自分のスキルを客観的に測り、
環境が急変しても別の現場へすぐに移れるポータビリティを持っておく。
まとめ
「還元率95%」という言葉は非常に魅力的です。
ただその裏側には、薄利ゆえに見えない歪みが積み重なりやすい構造があります。
- 原価の定義による財務の脆さ
採用費や有給分が計算に入っておらず実質カツカツ。退職や納税で資金ショートするリスクがあります。 - 多重下請け縮小による限界
高単価な浅い商流に依存しているため、大手の直営化や法規制の強化で案件が枯れると即倒産に繋がります。 - エンジニアに必要な自己防衛
表面的な数字だけに踊らされず、企業の安定性を見極め、自身の市場価値を高めておくことが重要です。
外から見える姿と、中で体験する現実の間には差があります。
これからの時代を生き抜くエンジニアにとって、
目先の数字に惑わされず、
万が一の事態にも動けるスキルを磨いておくことが本質的だと思います。
この記事が、どこかで迷っている方にとって、
少しでもヒントになれば嬉しく思います。

